事例紹介

粗視化ポテンシャルの評価

ポリブタジエンの粗視化分子動力学の計算を実施しました。その際、J-OCTAの粗視化ポテンシャル推算機能を適用しました。

粗視化ポテンシャルの推算方法は文献(1)に従っています。まず、全原子モデル(GAFF力場)で構築されたcis-ポリブタジエン(N=50)を用いて、一本鎖の真空中の緩和計算(トータル時間=10[ns]、データ出力間隔=10[ps])を実施します。その結果を用いて、モノマー一つを粗視化ユニットとした場合の粗視化ユニット間の結合長、結合角、結合二面角の分布を評価し、得られた分布から粗視化ポテンシャルを決定しました。なお、非結合ポテンシャルについては、粗視化ユニット間の相互作用を直接的に評価しています。

真空中一本鎖(N=50)について、全原子MDおよび粗視化MDそれぞれによる10[ns]の緩和計算を実施し、粗視化ユニット(モノマー)間の結合長、結合角、結合二面角の分布を評価しました(Fig.1)。全原子MDの分布を用いて粗視化ポテンシャルを求めているため、粗視化ポテンシャルを多項式で表現したことによる差異は見られるものの、両者は概ね一致しています。ここで、粗視化MDでは計算安定性の問題から結合二面角ポテンシャルの計算を省略しましたが、本ケースではその影響は小さいこともわかります。


Fig1. Distribution of length, angle and torsion angle. (unit = one monomer)
(Red = Coarse grained model, Blue = Full Atomistic model)

重合度Nを変えた場合の各バルク状態について、300[K]、0.1[MPa]でのNPTアンサンブル計算を実施しました(N=200の系では400[ns]の長時間計算を実施。全粒子数は5000に統一)。慣性半径と末端間距離のそれぞれの二乗の比はNを大きくすると6に漸近しており(Fig.2 left)、高分子理想鎖の特徴が得られています。


Fig2. R^2/Rg^2 and Density at bulk state.

最後に、J-OCTAのリバースマップ機能を用いて、全原子MDのバルク構造を作成しました(Fig.3)。バルク状態の祖視化MDの緩和計算結果から、各粗視化ユニットに該当する全原子モデルのモノマー構造を、結合軸の方向が合うように配置してつなげていきます。このような手順をとることにより、より緩和された全原子MDの構造を作成することができます。


Fig3. Reverse mapping
(left = coarse grained model , right = full atomistic model)
 
●参考文献
(1) J. Chem. Phys., 116, 8183, (2002)
(2) Macromolecules, 42, 791, (2009)




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