事例紹介

熱硬化性樹脂の架橋構造

  分子動力学法を用いて熱硬化性樹脂の架橋構造を扱う場合、簡易的な化学反応モデルを適用して複雑な三次元ネットワーク構造を構築していくことが考えられますが、反応過程に伴い分子量が次第に大きるため、系全体の構造が緩和するのに長時間計算が必要となります。

 そこで、粗視化分子動力学法を用いて、反応過程による架橋構造を生成し、十分に緩和した状態を得た後に全原子モデルにリバースマッピングする手法が報告されています[1]。

 リバースマッピングするための粗視化モデルを作成するためには、分子の化学的性質を反映したポテンシャルパラメータを求める必要があります。ここではJ-OCTAのCOGNACモデラーを用いてエポキシモノマーと硬化剤の反応前及び反応後の粗視化ポテンシャルを決定し、粗視化分子動力学法を用いて反応計算を実施し、エポキシ樹脂の架橋構造を作成しました(図1)。

 図2のように、反応前のモノマーと硬化剤の混合系の密度は0.91[g/cm3]ですが、反応後には1.28[g/cm3]と大きくなることなどが確認できました。

 現在、この後全原子モデルへのリバースマッピングを簡便に行うための手法を構築中です。


図1 粗視化モデルによるエポキシ樹脂の架橋
(左)反応途中の1分子を表示、(右)反応が進行し、全モノマーが1分子となった状態


図2 架橋による密度の上昇


 
●参考文献
[1] P. V. Komarov, C.Yu-Tsung, C. Shih-Ming, P. G. Khalatur and P. Reineker, Macromolecules, 40, 8104, (2007)




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